イクチ
妖 HR 妖力25妖術:惹かれあう海の油
【イクチ】
常陸(現·茨城県)の外海や八丈島近海などに現れたという
巨大な怪魚。「いくじ」ともいう。うなぎのような色をし
ていて、目や口は無く、丸く回るように泳ぐため船に巻
きついてくることもある。長さ数百丈(1丈は約3.33メー
トル)にもおよぶといわれ、船の上を通り過ぎるまでに30
分~1時間、あるいは2~3日かかったという話も伝わる。
船を乗り越える際に船が沈没しそうになるほど大量のね
ばつく油をこぼしていくという。
「素敵な輝きでしょう?イクチの油は肌に優し
く保湿もばっちり、紫外線も防げる優れもの
よ。量の加減だけ、できないのが玉に瑕だけ
ど。あなたの船にも分けてあげる。お肌つやつ
やになりながら海に沈むといいわ。」
「さっきは沈めって言ったけど、別に船を沈め
たいわけじゃないの。わからない?私は船を越
えたいだけ。見渡す限りの大海原に見慣れない
ものがあるから、おもちゃにしてみたいだけな
の。でもそうするとみんな沈んじゃうから、沈
めって言うことにしたの。そしたら沈みたくな
い船は逃げて、沈みたい船だけ残るかなっ
て。」
「いいの?この船で遊んでも、沈んだり怒った
りしないの ?… 油を降らせても貯蔵庫に流れ
て、それを算盤小僧が回収して売りさばくから
大丈夫?よくわかんないけど、イクチの油も役
に立って私も遊べるなら一石二鳥ね。うん、そ
れなら私、あなたについていくわ。」

あやかし百