白梅の精
化 SR 妖力35妖術:三十一文字の花の香·白
【白梅の精】はくばいのせい
江戸時代の奇談集『伽婢子』より。長野県飯田市上川路
の開善寺にある早咲きの梅花の精。戦国時代、村上義清
の家来·埴科文次が開善寺に寄った際、女童を一人連れた
二十歳くらいの美しい女の姿で現れた。白い小硅(こうち
ぎ)に紅梅の下襲(したがさね)を着た梅花の精は、埴科と
共に歌を詠み、酒を飲んで枕を交わしたが、明け方ごろ
埴科が目を覚ますとどこかへ消えていたという。
「この世のものとは思えぬほどに美しく匂い立
つ梅林、その白梅に宿った木精が私よ。数々の
風流人に愛されて、幾千の歌に詠まれ、恋や想
いを託され、例えられ、称えられてきたわ。花
とは私をさす言葉。美しさこそ私なの。」
「妖界の王になるという、あなたの戦は武力ば
かりのものかしら。それではあとが続かない
わ。あなたの口が何を紡ぎ、あなたの筆が何を
描くのかこそを、心ある者は見るのだから。苦
難の中にも歌を見出しなさい、それが導くとい
うことよ。」
「好文木(こうぶんぼく)は春告げの花。凍て
つく寒さに耐えた心に、芳しき春の予兆を届け
る花。鮮やかなる今様色に乙女心のような鴇
色、さまざまな色のきらめく中で、雪より柔い
白練(しろねり)が私の色よ。あなたはこの白
色に、どんな歌を重ねるのかしら。」

あやかし百