鎮火白菊稲荷
妖 SR 妖力36妖術:焼け野が原
【鎮火白菊稲荷】ちんかしらぎくいなり
山口県下松市に伝わる白狐の夫婦。ある森に銀色に輝く
美しい毛並みの白狐の夫婦が住んでいた。伏見の御本殿
から位を授かるために夫の狐が京へと出発したが、旅の
途中で人間に捕まり食われてしまった。帰りの遅い夫を
探すため旅立った雌狐は、夫である牡狐の悲業の最期を
知ると、酷く嘆き悲しんだ。その頃から毎夜のように火
事が起こりはじめた。白狐の崇りだと気づいた村の人間
が御宮を建てて白狐を祀り成仏を祈ると、火事がおさ
まった。以来、鎮火稲荷として人々の尊信を集めてい
る。
「夫の白雲とふたりで一つ。ふたりで一緒に
『鎮火白菊稲荷』の祭神をしているんだ。
祭神と言っても畏まらなくていいよ。私はこん
な感じだし、近所の幼い火の玉を集めて面倒を
みてるちょっとお節介なオバサンくらいに思っ
ておくれ。
あっ、でもね。鎮火稲荷ってくらいだから火を
鎮めることに関しちゃ折り紙付きだよ。」
「鎮火白菊稲荷っていうけど、鎮火は夫の力。
私は燃やすほう専門なんだ。
既に気づいてると思うけど白雲は一度死んで
る。昔、人間に食われちまったんだ。
私はもう我を忘れるくらい悲しくて悲しく
て......気づいた時には、この身から溢れる炎で
人と人の村を焼いていた。それに気づいてから
も焼き続けた。涙があふれると炎も溢れたん
だ。
そんな私を見かねて白雲が来てくれた。おちお
ち死んでいられないって言ってさ、黄泉の国か
ら戻って私の火を鎮めてくれたんだ。
ふふっ、いい旦那様だろ?」
「私の激情が炎となって野を焦がそうとすれ
ば、愛する夫は私の愛をあますことなく食ろう
てくれる。大きな愛で包んでくれる。それが私
たちの鎮火。
わかるかい?他の誰でもない、私のための鎮火
なのさ。私と私たちの愛を害する痴れ者のため
に火を消してやる道理はないんだよ。
そういうことなんでね、燃えろ燃えろ。
白い焼け野が原には私と白雲ふたりきりがい
い。邪魔者はいらないよ。」

あやかし百